消費税減税いよいよ実現へ前進、「食品スーパー」株に再脚光の時迫る <株探トップ特集>
―秋の臨時国会の最重要法案、来春実施・2年間限定・実質ゼロ化を巡って論戦へ―
「国策に売りなし」。世界的な金利上昇や中東情勢の混乱長期化、AI過剰投資懸念など不安要素の尽きない目下の株式市場において、投資家の拠り所となるのはこの相場格言だろう。高市政権が掲げる目玉政策、戦略17分野への成長投資に絡み幅広いテーマに物色が広がり、今もなお、例えば防衛やフィジカルAI、レアアース関連株の一角には根強く投資資金が流入している。こうしたなか、今後注目を集めそうな国策テーマとして忘れてはならないものがある。同政権のもう一つの目玉政策、食料品の消費税減税に絡む「食品スーパー」だ。
●財源「特例公債に頼らず確保」
政府は8月、食料品の消費減税を2027年4月からスタートする方針を閣議決定した。税率を8%から1%に引き下げるとともに、1%相当分の範囲内で所得に応じた給付を行い、税負担の「実質ゼロ化」を目指す。影響を受ける外食産業などに対しては支援策を検討する。実施時期は2年間に限定した。中低所得の現役世代を支援する新たな制度「給付付き税額控除」の29年4月導入開始を予定しており、それまでの経過措置との位置づけのためだ。
閣議決定文書には、焦点となる財源について「市場の信認を損なわないよう、特例公債に頼らず確保する」と明記。補助金・租税特別措置の見直しや追加的な税外収入の活用など、歳出歳入全般のあらゆる見直しを通じて捻出する考えを示した。給付付き税額控除の財源についても同様の考えを記した。10月上旬にも召集される臨時国会で関連法案が提出される見通しとなっている。
●株価の出遅れ感強い
株式市場では春以降のAI一極集中相場のなかで売られてしまった銘柄へのリターンリバーサルの動きが広がりをみせている。先の決算発表シーズンで業種を問わず概ね良好な企業業績が確認されたこともあり、出遅れていた非AIセクターには見直しが入りやすい。中東情勢に伴うサプライチェーン混乱によって原油・原材料価格が高騰し、この逆風が意識された食品や外食といった内需株、あるいは自動車や建設、電力などバリュー株には足もと戻り局面に転じている銘柄が目立つ。世界的な人気を誇るゲーム株の切り返しも鮮明だ。
では、非AIセクターの一角である食品スーパー株はどうか。目を向けると、依然として株価の冴えないものが多い。例えば、イオン <8267> [東証P]。昨年11月の上場来高値(2920円)から一貫して下落基調をたどり、6月安値(1274円)でようやく下げ止まったが、その後も底値圏を這う展開が続く。関連銘柄が多く属する東証33業種別指数「小売業」の年初来上昇率をみると、直近でわずかに1%あまり。日経平均株価(3割弱)に遠く及ばないのはもちろん、内需・バリュー株のウェートが比較的大きいTOPIX(2割程度)にも大きく引き離されている。同じく中東情勢の影響が懸念された食品や外食セクターと比べても相対的な出遅れ感は強い。
食品スーパー株は、年初の衆院選で消費減税が争点に急浮上したのをきっかけに一時人気化したが、その後は政策の実現可能性が見通せず、次第に投資家の関心が薄れていった経緯がある。消費減税を議論する「社会保障国民会議」で与野党の意見がまとまらず紆余曲折あったが、ひとまず8月の閣議決定で実施方針は明確となった。今後、臨時国会で法案審議を巡る論戦が繰り広げられるなかで社会的な関心が再び高まるとみられ、それとともに食品スーパー株に改めてスポットライトが当たる公算は大きい。今回、投資妙味のある6銘柄をピックアップした。
●地域ごとに企業さまざま
トライアルホールディングス <141A> [東証G]は九州地盤のディスカウントストア。スーパー大手・西友の買収で関東に本格進出し、新たな成長路線を歩み始めている。システム開発から業態転換して現在に至る異色の経歴を持ち、徹底的なデジタル化によって低価格での商品提供を実現している点が強み。27年6月期は営業28%増益で連続最高益を狙う。株価は6月安値(2506円)から下値を切り上げ、足もと4000円台に乗せてきた。4月高値(4840円)奪回からの一段高を期待したい。
ブルーゾーンホールディングス <417A> [東証P]は埼玉地盤の業界中堅。「ヤオコー」をはじめ「文化堂」「せんどう」など複数ブランドを首都圏中心に展開する。昨秋に持ち株会社体制へ移行し、それまでの「ヤオコー」から現社名に変更した。同社はヤオコー時代から長期の営業増益を続けている企業として知られ、26年3月期は37期連続増益を達成。27年3月期も最高益更新を見込む。株価は1600~1800円台のもみ合いを上に抜け、1900円台へと水準を切り上げてきた。
イズミ <8273> [東証P]は中国・四国・九州エリアで総合スーパー「ゆめタウン」、食品スーパー「ゆめマート」を主力に運営する。昨年投入した新たなプライベートブランド(PB)「ゆめイチ」が節約志向の高まる消費者ニーズを捉え、業績に貢献している。営業利益は27年2月期に前期比プラスの290億円を見込み、中期目標として31年2月期に350億円以上の達成を目指す。累進配当を続けている点はポイント。株価の回復は鮮明だが、依然としてPBRは1倍を割れている。
アークス <9948> [東証P]は「ラルズ」「ユニバース」「ベルジョイス」と多数のブランドを持つ食品スーパーグループ。北海道を地盤に東北地方に展開し、21年には北関東の同業オータニの買収で更にビジネスエリアを広げた。第1四半期(3-5月)はイラン情勢の影響が懸念されたが、商品開発や店舗改装など各種取り組みが奏功し増収増益を確保。通期計画に対し順調な進捗をみせた。石油製品の価格上昇に備え、食品トレーの使用割合見直しや規格の集約化を進めているという。
イオン九州 <2653> [東証S]は九州で大型店中心に総合スーパー、ホームセンターを展開。ECサイトやネットスーパーのほか、オフィス向けキャッシュレス無人店舗「スマートNICO」など、さまざまな取り組みで業容を拡大している。セルフレジや電子棚札といったデジタル化投資による効率化も奏功し、第1四半期(3-5月)は営業2ケタ増益を達成。株価は8月下旬にマドを開けて下落したが、これは中間配当の権利落ちに伴うもの。安値圏でじっくり仕込む戦略がよさそうだ。
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス <3222> [東証S]は「マルエツ」を運営する首都圏のスーパー最大手。イオングループ内の再編で15年に誕生し、24年に「いなげや」を傘下に収めた。直近決算の第1四半期(3-5月)は営業赤字に転落。ナフサ不足や販促強化の影響が出た。通期増益計画の達成が懸念されるところだが、既に株価は業績悪化を織り込み安値圏での動きに。下方修正の発表で悪材料出尽くしとなる展開も想定される。安定配当を堅持。一方でPBRは1倍割れだ。
株探ニュース