井出真吾氏【コアウィーブ・ショックの影響と秋相場の行方】 <相場観特集>
―中間決算で焦点はツルハシからソフトウエアへ移行、米中間選最大のリスクとは―
米ネオクラウド企業、コアウィーブ<CRWV>への信用不安で大荒れとなった先週の影響が注目された週明け19日の東京市場で、日経平均株価は朝方こそ大きく売られたが、その後は値を戻し、結局、前週末比407円安で着地した。果たして今回の波乱は何を意味するのか。日米の企業決算、米中間選挙と重要イベントが控えるなか、秋相場はどのような方向に向かうのか。ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏に今後の見通しを聞いた。
●「『コアウィーブ・ショック』は利益確定の格好の口実に過ぎず」
井出真吾氏(ニッセイ基礎研究所 研究理事 チーフ株式ストラテジスト)
まず、先週来の米コアウィーブ急落の影響について述べたい。日経平均は2週間ほど前につけた7万円台から6万5000円を割るまで調整したことになるが、ファンダメンタルズで見れば、それほどおかしなことではない。そもそも7万円台という株価は、バブルとは言えないまでも、バリュエーション面でストライクゾーン高めいっぱいの水準。今回の「コアウィーブ・ショック」は、市場参加者に利益確定の機会を与える分かりやすい口実を与えたに過ぎないのではないかと感じている。
実際、日経平均はきょうの朝方売られて以降は値を戻しており、今回の件がAI 需要拡大の流れを揺るがすものではないと考えるのが自然だ。とは言え、当面は市場の懸念が完全に取り除かれるまでには至らず、ボラティリティの高い展開が続くだろう。カタリストとなるとすれば、22日未明に発表されるメタ・プラットフォームズ<META>の決算だ。この結果次第では、週後半に東京市場が大きく動く可能性もある。国内では23日に発表される9月の全国消費者物価指数(CPI)に注意が必要だ。現時点では、日銀の10月利上げはほぼ織り込まれていないが、足もとで東京都区部のインフレが加速しているというデータもあり、一転、追加利上げの確率が上がるケースも考えられる。
一方、来週から本格化する27年3月期第2四半期決算発表では、これまで相場をけん引していた半導体を始めとしたAIツルハシ銘柄以上に、AIをサービスに活用するソフトウエア銘柄に注目したい。多くの投資家の目がツルハシ銘柄に集中しているが、実は4月以降の業種別株価騰落率では、半導体などの製造業よりソフトウエア産業の上昇率が高い。中身を見ると、前四半期決算でAIのサービス活用により好決算を発表し、半年で株価が3倍化しているリクルートホールディングス <6098> [東証P]がけん引している。「次はどこか」が焦点だ。ただし、ツルハシ銘柄と異なり、ソフトウエア銘柄は玉石混交で銘柄の選別は容易ではない。その意味では、年前半のような一極集中ではなく、銘柄の分散が求められる。
向こう1ヵ月の日経平均の予想レンジは、5万9000~7万1000円と読む。ネガティブ・シナリオは、コアウィーブに端を発した信用不安が他のAI企業にも拡大すること、そして米中間選挙で共和党が上院・下院ともに負けることだ。レームダック(死に体)となれば、トランプ大統領がレガシーづくりを優先し、今後2年間、議会の承認を得ずに外交面で暴挙に及ぶ可能性も考えられる。市場としては、上下両院を両党で分け合う結果が一番望ましいはずだ。逆にこれらリスクが発生しないと仮定した場合、ポジティブ材料となるのはやはり中間決算の内容だ。ここで更に一段の上振れとなれば、7万1000円を超えて高値を更新していく展開も十分にあり得るだろう。
(聞き手・樫原史朗)
<プロフィール>(いで・しんご)
ニッセイ基礎研究所 研究理事 チーフ株式ストラテジスト。1993年、東京工業大学(現・東京科学大学)卒業後、日本生命保険入社。99年、ニッセイ基礎研究所に出向、2026年より現職。株式市場・資産形成・マクロ経済を専門に分析。科学的かつ分かりやすい解説に定評があり、新聞・テレビなど多数のメディアに出演中。著書に「井出真吾の投資相談室 63のQ&Aでわかる安心運用」(日本経済新聞出版)などがある。
株探ニュース