巨額経済損失を防げ!人的資本経営の波に乗る「疲労対策」関連株 <株探トップ特集>
―放置は致命的な経営リスク!市場での評価低下や採用負け防止で商機拡大へ―
足もとで東京株式市場はAI・半導体関連株を中心に荒い動きを見せている。こうした局面では、短期で値幅の出る銘柄に注目しがちだが、同時に外部環境の変動とは別の軸で評価できるテーマを拾う視点も欠かせない。
そこで今回注目したいのは、人手不足への対応や労働生産性の底上げの面から見直し機運が高まっている「疲労対策」関連だ。折しも世は疲労回復ブームだが、かつて株式市場において「疲労対策」という切り口は、夏場の猛暑に伴う「夏バテ対策」など季節限定的なテーマだった。ただ、近年では従業員のコンディション管理を企業価値や収益力に結びつける視点が広がりつつあり、関連銘柄のビジネスチャンスも広がっている。
●疲労による経済損失は年15兆円
気温の寒暖差による自律神経の乱れや、長時間に及ぶデジタル機器の作業、人手不足による過剰な労働、睡眠不足など現代人にとって疲労は日常化している。ただ、「疲労」が単なる健康問題ではなく、大きな社会問題となりつつあると聞いてピンとくる人は少ないだろう。
近年「疲労」は単なる個人の健康問題ではなく、企業業績や国全体の稼ぐ力を下押しする要因になるとの見方が広がっている。日本リカバリー協会によると、疲労による企業の経済損失額(健康関連コスト)は年間で15兆円規模に達し、従業員1人当たりでは年間22万7000円の損失が生じているという。
つまり、病気による「休職・欠勤」といった目に見えるコスト以上に、「仕事はしているものの、疲労や集中力低下によってパフォーマンスが上がらない状態」が、企業利益を削り取っていることになる。一方、企業にとってはここを改善すること自体が業績改善の伸び代となることから、会社として社員の疲労ケアや睡眠改善、メンタルヘルス対策に乗り出すことになる。
●人的資本開示と健康経営が追い風
「疲労」が特に注目されるようになったのは、制度改正により、2023年3月期から有価証券報告書での人的資本に関する開示が求められるようになったことが大きい。疲労対策そのものが義務開示項目になっているわけではないものの、「人的資本可視化指針」では開示の領域として健康・安全が整理されており、そのなかに身体的健康状態に加え精神的健康状態も含まれるとある。これをきっかけに長時間労働の抑制、休養や睡眠への配慮、メンタル不調の予防、勤務環境の改善といった疲労対策が重視されるようになった経緯がある。
また、経済産業省が推進する「健康経営優良法人」でも、優秀な人材を採用・定着させるための条件として、定期健診・ストレスチェックの実施などがある。こうしたことから、いまや企業にとって、疲労・健康対策がブランド価値を左右することにつながり、社員の疲労を放置することは「株式市場での評価低下」や「採用負け」に直結する致命的な経営リスクとなりつつある。
●BtoBでマーケット拡大へ
一方、こうした疲労に対する対策といえば、個人がドラッグストアで栄養ドリンクやサプリメントを購入するケースが中心だったが、ここ数年急速に市場を拡大させているのが疲労回復ウェア(リカバリーウェア)だ。また、前述のように企業が社員の疲労対策に目を向け始めたことで、BtoB、あるいはBtoBtoCへマーケットも拡大している。
こうした企業が福利厚生や人的資本投資として導入するBtoB型のサービスは、一度導入されると定期的に安定した収益をもたらすストック型収益となり、関連するビジネスを展開する企業にとってメリットが大きい。例えば、センサーやウェアラブル端末で社員の睡眠・疲労度を可視化して改善プログラムを提供するスリープテックSaaSなどはその代表例だ。
そこで今回は、疲労対策で稼ぐ銘柄をピックアップしてみた。
●toBの疲労対策で注目される銘柄
TENTIAL <325A> [東証G]は、「BAKUNE」ブランドで睡眠をサポートする疲労回復ウェアや足元から健康に導くリカバリーサンダルなど幅広いアイテムを展開。個人向けが中心だが、ホテルや移動空間などのアメニティとして同社製品を提供するtoB(法人向け)ビジネスも拡大している。24年には自然派ラグジュアリーホテル「シックスセンシズ京都」に向けて「BAKUNE」シリーズのパジャマを提供。今年4月からはANAホールディングス <9202> [東証P]に向けてANA国際線ファーストクラスの全路線に「BAKUNE」を提供するなど法人向けビジネスが拡大している。
アドバンテッジリスクマネジメント <8769> [東証S]は、メンタルヘルス及びストレスチェック支援の国内におけるパイオニア。従業員のストレス状態を可視化・分析し組織改善につなげる「アドバンテッジ タフネス」や、健診データ・人事労務データなどを一元管理し課題に応じた施策の提示・実行を支援する「アドバンテッジ ウェルビーイングDXP」を展開しており、過重労働や自律神経の乱れからくる「慢性疲労」「パフォーマンス低下」を早期に発見・改善するBtoB型プラットフォームとして大企業を中心に導入が進む。健康経営優良法人とその大規模法人部門の上位500法人である「ホワイト500」の約3割が同社のソリューションを導入しており、健康経営優良法人を目指す企業の増加が強力な追い風となっている。
エムスリー <2413> [東証P]は、国内医師の9割以上が登録する国内最大級の医療従事者向けポータルサイトが主力だ。同基盤を活用した製薬向けマーケティングに加え、近年は法人向けヘルスケア分野に注力しており、従業員の健康に関するデータの一元管理や活用を支援するクラウドサービス「ハピネスパートナーズ」や、産業医の紹介・活用支援などを提供。これら企業の人的資本経営を支えるストック収益の積み上がりが進む。長時間労働やメンタル不調に伴う疲労リスクの早期可視化を通じ、企業の生産性向上やブランド価値の維持に貢献する銘柄としても注目されている。
勤次郎 <4013> [東証G]は、就業・勤怠管理システムの大手。就業管理を中心としたクラウドシステムや健康経営システムを展開。同社の「Universal勤次郎」は就業や人材、給与などのHRデータに加え、健康データも一元管理し、統合的な分析や活用を支援する。勤務データや健診結果、ストレスチェックの情報を組み合わせて分析し、過重労働やメンタル不調に伴う疲労リスクの可視化を支援。従業員の不調を早期に把握し、休職や離職の予防につなげるサービスを展開する。勤怠管理から健康経営までを一気通貫で支援する独自ポジションが強みとなっている。
ウェルネス・コミュニケーションズ <366A> [東証G]は、企業や健康保険組合向けに健康診断ソリューションと健康管理クラウドを展開する。主力のクラウド型健康管理システム「Growbase」は、健診結果やストレスチェックなど心身の健康情報を一元管理し、過重労働やメンタル不調に伴う疲労リスクへの対応を支援。人的資本経営や健康経営の推進を追い風に契約数を順調に積み上げている。
JMDC <4483> [東証P]は、健康保険組合や企業向けに医療・健康ビッグデータプラットフォームを展開する。近年は企業向けの産業保健支援にも力を入れており、「Pep Up for WORK」を通じて、健診やストレスチェック、長時間労働者管理、面談記録などを一元管理し、従業員の心身の不調や疲労リスクへの対応を支援している。睡眠を含む生活習慣データの活用にも強みを持ち、疲労対策を企業の生産性維持や人材定着につなげるBtoB銘柄として関心を集めている。
このほか、独自開発の繊維「バイタルテック」を用いたリカバリーウェア「ReD」シリーズを強力に展開するMTG <7806> [東証G]は、医療従事者向け「ReD」シリーズとして「リカバリースクラブ」を投入。医療施設での導入も進んでおり、医療従事者の疲労回復に貢献している。
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