セキュリティー強化急げ、「ICチップ本人確認」で急浮上する銘柄群 <株探トップ特集>
―金融庁が金融機関などへ導入前倒しを要請、来春から義務化正式スタートへ―
企業を狙った不正アクセスに収束の気配はなお見えない。ここ最近にわかに急増した印象があるが、その理由を巡っては高度化するAIによるものという解説がなされ、攻撃主体は中国など海外系のハッカー集団ともみられているが、その全容は不明だ。ともあれ相次ぐ事件を受け、サイバー空間の安心・安全に対する社会的な意識は一段と高まったに違いない。ウイルス対策ソフトや不正検知システム、多要素認証など今後あらゆる場面で多種多様なセキュリティー対策の導入がますます広がることになろうが、その一つとしてICチップを使った「オンライン本人確認(eKYC)」に目を向けてみたい。
●ICチップ方式移行の発表続々
金融庁は9日、「現下の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化と各種取引申込等における対応について」と題するリリースを公表した。金融機関などに対し、セキュリティー対策の点検や本人確認書類のチェック徹底を求めるとともに、ICチップによるオンライン本人確認の導入前倒しを要請した。犯罪収益移転防止法(犯収法)施行規則の改正に伴い、本人確認方法として書類を画像送信する方式は廃止され、 マイナンバーカードや運転免許証に内蔵されたICチップ情報を読み取る方式に一本化される。金融機関をはじめとする特定の事業者においては原則義務化となる。このルールは2027年4月からスタートするが、これについて「施行日を待たず、可及的速やかな対応を図ること」としたのだ。
これを受けて早速、動きが出始めている。既に対応済み、あるいは対応を予定している企業はさまざまあるが、直近では京都銀行が15日、スマートフォンアプリで口座開設する際の本人確認について11月2日からマイナンバーカードを利用する方式に一本化すると発表した。みずほ銀行はインターネットによる口座開設で、運転免許証の撮影による本人確認での申し込みを19日から受け付け停止にした。三井住友銀行も23日から同様の措置を講じた。SBI新生銀行 <8303> [東証P]は28日からICチップ読み取り方式に移行する予定だ。
●急速人気化のショーケース
企業への不正アクセスに伴う情報漏えい事件がメディアを通じて大きくクローズアップされ始めた9月後半ごろから、株式市場では「サイバーセキュリティ」のテーマが一躍脚光を浴びた。関連銘柄が次々と動意づき、大いに盛り上がりをみせた。こうしたなかで前述の金融庁による注意喚起を受け、オンライン本人確認を手掛ける銘柄も周辺テーマとして旺盛な投資資金を誘引する格好となった。
なかでも異彩の上げ足で投資家の熱い視線を一身に集めたのが、ショーケース <3909> [東証S]。各種クラウドサービスを開発・提供しており、その一つにオンライン本人確認サービス「ProTech ID Checker」があることから、これが物色の手掛かりとなった。同サービスは累計導入500社以上の実績を誇り、金融や通信、不動産など幅広い業界に展開。犯収法をはじめとする法律にも準拠している。株価は7日から商いを伴って上昇し始め、金融庁の注意喚起があった9日はマイナス圏に沈む場面もあったが、売り物をこなし大引けはストップ高に。その後もストップ高を交えた急騰で200円前後の水準から一時1000円台まで駆け上がった。
ショーケースは24年に独立系投資会社AIフュージョンキャピタルグループ <254A> [東証S]と資本・業務提携し、同企業の連結子会社となった。AIFCGは22日、ショーケースと共同で地域金融機関の取引先企業向け本人確認・認証サービス販売事業を開始すると発表。同社も株価を急動意させた。
●日立と連携実績あるサイバトラスなど注目
ELEMENTS <5246> [東証G]は生体認証や画像解析、機械学習技術を活用した個人認証ソリューションを提供する。主力のオンライン本人確認サービス「LIQUID eKYC」は国内シェアトップクラスを誇り、銀行や証券、クレジットカードといった金融機関から大手通信キャリア、各種ITサービス会社まで幅広い顧客基盤を有する。デジタル化や法対応に伴う需要を捉え、期中に通期予想を2度も上方修正。売上高は前期比46%増の57億円、営業損益は前期赤字からの黒字転換を見込む。
GMOグローバルサイン・ホールディングス <3788> [東証P]は電子認証とサーバー管理の2本柱で事業を展開。数あるサービスの一つとして「GMO顔認証eKYC」を手掛けており、6月にICチップ読み取りによる本人確認に対応した。今月19日に26年12月期純利益予想を上方修正。特別利益を織り込み、前期比31%増の13億1200万円(従来予想10億5200万円)とした。6期ぶり最高益更新を見込む。配当予想も増額し、これを受けて株価は年初来高値圏に舞い上がった。
フライトソリューションズ <3753> [東証S]は金融領域に強みを持つシステム開発会社。マイナンバーカードなどを用いた本人認証ソリューション「myVerifist(マイベリフィスト)」を手掛ける。主力の決済ソリューションの大口案件が貢献し、直近決算の第1四半期は営業黒字(3億100万円)に浮上して着地。4期ぶり黒字転換を狙う通期計画(3億8000万円)に対して高進捗となった。株価は既に動意づいている。今月14日には京セラ <6971> [東証P]と決済領域で技術連携すると発表した。
また、「iTrust本人確認サービス」を手掛けるソフトバンク傘下のサイバートラスト <4498> [東証G]にも注目。セキュリティー関連の中心的な銘柄として人気化し、なおも投資資金の攻勢が続いている。3月に本人確認ソリューションを提供開始したマクセル <6810> [東証P]に加え、本人確認・認証サービスを手掛けるイー・ガーディアン <6050> [東証P]、「D-Confia」のブランドでサービス展開するダブルスタンダード <3925> [東証P]、金融機関向けに「口座開設Webアプリ+eKYC」を提供する共同印刷 <7914> [東証P]なども見逃せない。
このほか、主力どころの銘柄では日立製作所 <6501> [東証P]がeKYC支援サービスを手掛けている。サイバトラスとの連携で機能拡張を図り、iPadにおける本人確認書類のICチップ読み取りサービスとして金融機関向けに提供している。NTT <9432> [東証P]は傘下のNTTデータグループで本人確認ソリューション「BizPICO」、大日本印刷 <7912> [東証P]は「オンライン本人確認(eKYC)総合サービス」を手掛ける。TISI <3626> [東証P]は1月から、キヤノンマーケティングジャパン <8060> [東証P]はグループ会社プリマジェストにおいて10月から、それぞれ本人確認サービスの提供を始めている。セブン銀行 <8410> [東証P]と電通総研 <4812> [東証P]は共同出資するセキュリティー企業ACSiON(アクシオン)を通じてサービスを展開している。
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