明日の株式相場に向けて=AI周辺に還流する巨大マネーの光と闇
きょう(27日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1078円高の6万3268円と大幅反発。満を持しての切り返しという表現がピッタリくるような反騰パフォーマンスであった。10月を振り返ると出足こそスタートダッシュを決めたが、その後は7日水曜日を境に怒涛の勢いで利益確定の売りが噴出した。AI関連株への風当たりは思った以上にきつく、前日までの直近13営業日で日経平均が上昇したのはわずか2日間のみだった。この間に約8500円も水準を切り下げたわけで、「5万円のプットが不気味に厚い」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘が聞かれるなど、これはちょっとした事件モードともいえた。
きょうは、その不安心理をとりあえず跳ねのける格好となったが、その契機となったのが米アンソロピック<ANT>のIPOに向けた目論見書の公表だ。一瞬、「そんなことで」と思ってしまうが、市場関係者は「AI関連企業のIPOが延期ラッシュとなるなか、アンソロピックも11月予定のナスダック市場への株式公開が後ずれする可能性が少なからず意識されていた。しかし、このタイミングで目論見書を公開提出したことは、上場カウントダウンに入ったという会社側からのメッセージともとれ、11月中に新規公開する意思を確認できたという意味で大きな前進だった」(中堅証券ストラテジスト)という見方である。
もっとも、本家本元の米国株市場ではこのニュースに関する反応は思ったよりもクールで、ナスダック総合株価指数の上昇率は1%に届かなかった。諸手を挙げて歓迎する話でもなかったのかという疑念も湧く。アンソロピックの26年上半期(1~6月)の売上高は163億ドルと前年同期比で約14倍化した。これは同社に対する下馬評を裏付ける実績といえるが、同期間の純損失はその約5倍にあたる807億ドル、日本円に換算して12兆7000億円に及ぶ。もっともこの赤字は同社がビジネスで発生させたものではなく、アルファベット<GOOGL>やアマゾン<AMZN>など、あくまで出資者(大株主)への負債という位置づけで、それだけ上場時の高い期待を反映した“値札”ということにもなる。だが、上場によっていったんアンソロピックに入った資金が、インフラ使用料と言う名目でハイパースケーラーに漸次吸収されていく構図が見えており、エヌビディア<NVDA>でも槍玉に挙がったラウンドトリップ(循環取引)の色彩を完全に払拭するのは容易ではない。セカンダリーでアンソロピックを買った投資家は貧乏くじを引くかもしれないという思惑。そうした事情を冷徹な視線で米株市場は見透かしているようにもみえる。
きょうの日経平均は4日ぶりの急反発で5日移動平均線上に頭を出し、底入れの兆しを明示した。ただ、日経平均が終値で1000円を超える上昇を示したとはいえ、その半分以上はアドバンテスト<6857>のパフォーマンスによるものであり、1銘柄で600円あまり弾き出している。これにソフトバンクグループ<9984>、東京エレクトロン<8035>、イビデン<4062>、TDK<6762>、ファナック<6954>の5社を加えれば日経平均の上昇分すべてを補ってしまう勘定である。プライム市場全体では、値上がり銘柄数704に対して値下がり銘柄数は798と90銘柄以上多くなっている。さすがにきょうはTOPIXも高かったが、上昇率は日経平均の1.7%に対しわずか0.6%にとどまった。指数としての日経平均の歪み具合を改めて印象付けた。
AI・ 半導体関連以外ではサイバーセキュリティー関連が相変わらずの大立ち回り。セキュアヴェイル<3042>の爆騰ぶりには舌を巻く。20日に急騰後にストップ安に売り込まれる大陰線暴落に遭遇した、通常はここで幕引きとなるのが相場だが、その後のストップ高連発で株価は初動時から5.7倍化した。このほか、同社株と併走して株価の居どころを変えたのがショーケース<3909>。更にサイバートラスト<4498>や網屋<4258>も目を見張る値動きだ。高市早苗首相が「能動的サイバー防御」の発動の可能性に言及し、国策に売りなしを地で行くホットスポットと化している。
もう一つ投資テーマとして新たな風が吹き込んでいるのがペロブスカイト太陽電池関連だ。同電池は日本発の技術分野として高市首相の肝いりでもあるが、量産に向けて官民連携のシナリオが明確に描かれ始めた。同テーマでは物色人気の常連である伊勢化学工業<4107>などをはじめ動意株が目白押しとなっている。関連銘柄では、既に動兆著しいがエヌ・ピー・シー<6255>が600円台の株価で値頃感があるほか、同じく株価3ケタ台の銘柄としてケミプロ化成<4960>やフジプレアム<4237>に妙味が感じられる。
あすのスケジュールでは、国内では特に目立った経済指標の発表やイベントは見当たらないが、個別企業の決算発表では注目されるものが多い。まず、半導体関連ではアドバンテスト、ソシオネクスト<6526>の27年3月期中間期(26年4~9月)決算にマーケットの耳目が集まるほか、IT大手ではNEC<6701>、日立製作所<6501>の4~9月期決算が注目される。このほかでは、さくらインターネット<3778>の決算も予定されている。海外企業では韓国半導体大手のSKハイニックス<SKHY>、米国ではアルファベット、マイクロソフト<MSFT>などの7~9月期決算に世界的な関心が高い。また、海外のイベントスケジュールではニュージーランド中銀やカナダ中銀が政策金利を発表するほか、FOMCの金融政策発表とウォーシュFRB議長の記者会見が要注目となる。(銀)