明日の株式相場に向けて=キオクシア安値更新とスーパーサイクル突入の矛盾
名実ともに11月相場入りとなった2日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比208円安の6万3081円と続落。「2日新甫は荒れる」という。その格言もチラつくなか、朝方取引開始前はリスクオフムード一色に包まれていたが、いざ取引が始まると予想以上に底堅さを発揮した。日経平均は一時プラス圏に浮上し、その後は前週末終値を挟んでせわしなく往来したのだが、結局取引終盤はマイナス圏に沈んだ。だが、下落率は0.3%強というわずかな下げにとどまった。
まず前週末の米国株市場を振り返ると、半導体セクターが文字通りの波乱となり、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数が2.9%安と大幅安に売り込まれた。更に半導体関連30銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は7.2%安と急落に見舞われた。何といっても個別では決算発表を受けたインテル<INTC>の下げが強烈で、一時30%を上回る暴落となった。実に50年ぶりの下落率という。26年10~12月期の売上高見通しが市場期待を裏切り、アナリストの投資判断引き下げが相次いだとはいっても、こうした象徴株の一角が半世紀ぶりのセンセーショナルな崩れ足を形成するケースは、ミクロの事象ではなくAI相場崩壊の序曲ともなり得る重みを有する。案の定、この日の米株市場では、その他 AI・ 半導体関連銘柄も軒並みインテル・ショックに感電した様相で、フリーズ状態での下落を余儀なくされる銘柄が後を絶たなかった。
東京市場においても突風が吹いた。キオクシアホールディングス<285A>が前週末の引け後に開示した決算発表で、10~12月期の純利益予想が前四半期(7~9月)との比較で横ばいにとどまったことが、株価急落のトリガーとなり投資家の気勢を削いだ。同社は10月23日につけた暴落後の直近安値1万1380円を下回ったが、これはティッピングポイント、いわゆる閾(しきい)値をブレイクしたことで投げが加速するパターンに陥る可能性を示唆するものだ。日経平均構成比で同社株は13位にあるが、それでもその他の半導体株を巻き込むのは不可避と思われた。しかし、日経平均は想定外の強さを発揮し一時プラス圏に切り返す異色の強さを発揮した。種を明かせば、同じく前週末に決算発表を行った東京エレクトロン<8035>が買われる展開となったことがその理由だ。前週28日に一足早く極み付き好決算が評価されたアドバンテスト<6857>とセットで、日経平均を500円以上(一時は600円程度)押し上げたというのが真相である。
このケースにも映し出されているように、半導体セクターは同時進行で強弱観が拮抗したまま、不思議なバランスで共存している状態にある。直近の利益や今後の見通しで、伸びが鈍化すれば「市場期待に届かず」というレッテルを貼られ株価は売られる。しかし、アドテストや東エレクの決算では「半導体のスーパーサイクル突入」という“称賛ワード”が飛び交い、それがそのまま株価の浮揚力に化けている。業態に差異はあっても、ほぼ同じ空間で視点が変わっただけでここまで株価評価に変化が生じるのは、人間の感性では捉えきれない領域だ。“銘柄によって選別色が強まる”という但し書きは良い意味合いでも使われるが、ここから先のAI関連復活の道筋は決して平坦ではないことも暗示している。
今は需給主導で揺さぶられているが、ファンダメンタルズからのアプローチで過度な不安心理が取り除かれ、再び上昇波を取り戻すとみている市場関係者も少なくない。しかし、不安の壁をよじ登っていくには、キオクシアの場合、今の買い残は重すぎる。ネット証券大手では大口客の新たな入金が目立ち、キオクシアは買い越しであったという。個人投資家マネーの懐の深さというべきかもしれないが、ベインキャピタルの後塵を拝して売り需要を発現させている大株主の受け皿になる懸念は依然としてくすぶったままである。
米中間選挙は現地時間3日に投開票が行われるが、日本時間では4日の東京市場の取引時間中に漸次明らかとなっていくとみられている。トランプ米政権に対する支持率の低さを考えれば、現状でトリプルレッドという事実すら忘れてしまいがちだが、今回は大統領のみが赤で議会が青に染まる可能性も否定できない。激戦7州であるミシガン、テキサス、オハイオ、アイオワ、カンザス、メーン、アラスカはミシガンを除いてすべて共和党の旗が立っていたところで、今回は共和党にとっては死塁を守る防衛戦ということになる。株式市場においては、中間選挙後の米株高という戦後100%の鉄壁アノマリーが機能する可能性はそれなりに高いと思われるが、買い場は「Now or never(今でしょ!)」とは言い切れない。やはり中間選挙後に捜しに行くのが期待値の高い投資戦略といえるのではないか。
あすのスケジュールでは、東京市場は文化の日の祝日に伴い休場となる。国内では特に目立った経済イベントや経済指標は見当たらない。海外では26年7~9月期の香港域内総生産(GDP)が開示されるほか、豪州準備銀行理事会が行われ政策金利が発表される。また、この日に投開票される米中間選挙の結果に世界の耳目が集まる。これ以外では9月の米雇用動態調査(JOLTS)にマーケットの注目度が高いほか、9月の米製造業受注なども開示される。米主要企業の決算発表では半導体設計大手アドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>の7~9月期決算に投資家の視線が集中する。バイオ専業大手のアムジェン<AMGN>も7~9月期決算を発表する。(銀)