医療DXの中枢を担う「クラウドネイティブ型電子カルテ」関連を追え <株探トップ特集>
―医療システムもいよいよ新時代へ突入、政策支援追い風に圧倒的なデータ基盤構築へ―
電子カルテというテーマに関して、その普及率だけを見れば一見成熟した市場にも映るが、政府が目指している本質は、医療データを安全に共有・連携・利活用するための社会インフラ整備である。電子カルテはその入り口となるもので、その観点から「クラウドネイティブ型電子カルテ」は医療DXの本丸に近い。2030年に向かって今後は一層注目度が増していくことは必至だ。
●全国医療情報プラットフォームと接続可能
医療DX推進の中核的存在として「クラウドネイティブ型電子カルテ」への関心が高まりつつある。紙カルテから電子カルテへの置き換わりは既にかなり進展している。普及率をみても、昨年11月に報告された調査では、電子カルテシステムが稼働中としている病院は77.7%、診療所は71.0%とされる。
しかし、政府が進める「医療DX」という巨大な文脈で本質的に求められているのは、単なる紙媒体の電子化に見えても、遅れている院内業務の電子化に焦点を当てたものとは違う。医療機関ごとに分断されてきた診療情報を標準化し、処方箋、資格確認、カルテ情報共有、更には全国医療情報プラットフォームと接続可能なデータ基盤へと全体を再構築するということである。
ここで重要になるのが、従来型の電子カルテとクラウドネイティブ型電子カルテの違いだ。現状普及している従来型は、いわゆるオンプレミス型とされるもので、各医療機関の業務フローに合わせて個別カスタマイズされるケースが多かった。これは各現場への適合で優位性がある一方、互換性、データ移行、外部連携、法改正対応、セキュリティーなどの面で課題を抱えやすい。
●2030年末までに普及率100%目指す
これに対してクラウドネイティブ型電子カルテは、最初からクラウド上での利用を前提に設計される。単に既存システムをクラウド環境へ移しただけの「クラウド移設型」とも異なり、SaaS型サービス、マルチテナント方式、標準API、継続的アップデート、データ互換性を前提とする点に本質がある。つまり、クラウドネイティブ型電子カルテとは、「医療データの標準化・共有・連携・活用の基礎インフラ」とでも位置づけるべきものである。
政策面の追い風も今後強まっていく。地域医療介護総合確保法では「政府は、令和12年12月31日までに、電子カルテの普及率が約100%となることを達成するよう、クラウド・コンピューティング・サービス関連技術、その他の先端的な技術の活用を含め、医療機関の業務における情報の電子化を実現しなければならない」と明記されており、30年に向けてまさにこれから動きが加速していく。
実際、直近6月末に規制改革推進会議が高市首相へ提出した答申では、電子カルテ情報共有サービスを巡り、対象情報の拡充、保存期間の延長、データ収集率向上の仕組み導入、共有・閲覧対象者の範囲拡充、二次利用の対象情報拡充について、今年中に結論を得次第速やかに措置するよう求めている。
●医療従事者減少下でのクオリティー確保に不可欠
また、本人同意不要で利用できる医療等データについても、範囲、利用主体、利用目的の在り方を整理し、今夏を目途に結論を得る方針が示された。医療データの共有・利活用に向けた制度設計が進むなかで、医療DXの推進が一段と加速するのは既定路線といえよう。
現状、オンプレミス型や独自仕様型の電子カルテが数多く残っていることは、入れ替え需要の存在を意味する。デジタル庁で開発中の「標準型電子カルテ」は、限定的な「導入版」という位置づけであり、むしろ市場創出ないし民間開発を促す意図のものであろう。今後、電子カルテ情報共有サービスや電子処方箋、全国医療情報プラットフォームとの接続、データ二次利用への対応、ひいては生成AI入力補助などが求められるほど、従来型システムの限界は意識されやすくなるはずだ。
生産年齢人口の減少によって、早晩現在の医療体制は維持が困難になっていくことが明らかであり、医療従事者の労働負荷軽減、人手不足対策、医療の質の均てん化のためにも医療DX実現が不可欠だ。その中で重要な役割を果たすのが「クラウドネイティブ型電子カルテ」ということになる。
そこで同テーマに関連する銘柄にスポットライトを当ててみる。代表的な位置づけでは富士通 <6702> [東証P]が注目されそうだ。同社は中小規模病院向けクラウド型電子カルテシステム「HOPE Smart Cloud Karte」を昨年9月にリリース。1500以上の導入実績から「運用の定型化」に成功し、初期マスタを搭載した状態で提供されるため、専門のIT人材がいない病院でも短期間・低コストで稼働でき、国の「医療情報システムのクラウド化に伴う検討事業」補助金の対象製品にもなっている。今回の特集では、このほか新興クラウド企業や中堅SIerなどを中心に紹介する。
●医療DXの近未来で活躍期待の5銘柄
◆PHCホールディングス <6523> [東証P]~グループ会社のウィーメックスは電子カルテシステム・レセプトコンピューターで国内市場シェアトップクラスを誇る。完全クラウド型レセコン一体型電子カルテ「Medicom クラウドカルテ」を提供。昨年秋に実施したアップデートによって、カルテ画面上で外注検査の検査依頼入力、表形式での検査結果確認やカルテへのコピー機能が利用できるようになったほか、他社機器・システムとの連携を拡大するための機能拡充や他社システムからの乗り換えを可能とするデータ移行機能の実装など、一段と利便性が向上している。
◆エムスリー <2413> [東証P]~日本最大級の医療従事者専門サイト「m3.com」を運営。クラウド型電子カルテのエムスリーデジカルでは電子カルテが入力内容を自動で学習するため、自分でよく処方する内容を登録しなくても電子カルテ側で自動的にセットが生成され、入力の手間が大幅に減る。また、自動学習機能は約1.7万人のカルテデータをパターン分析して開発された機能であり、一人の患者だけではなく、カルテに入っている全患者の学習が反映されるので、使えば使うほど医師が好む処置行為を学習していく。
◆ファインデックス <3649> [東証P]~大学病院などの大規模病院向けに、データ管理システム「Claio」や電子カルテ周辺ソリューションを展開する。同社はクリニック・小規模病院向けの診断書等文書作成サービス「DocuMaker Cloud(ドキュメーカークラウド)」を標準搭載した唯一のクラウド電子カルテとして、「REMORA Cloud(リモラクラウド)」を提供。同製品は生命保険・損害保険診断書(1800種以上)、臨床調査個人票や小児慢性特定疾病医療意見書(2100種以上)など多彩なフォーマットを自動更新するため、常に最新書類を作成可能。
◆CEホールディングス <4320> [東証S]~子会社のシーエスアイにおいて電子カルテシステム「MI・RA・Is(ミライズ)」シリーズを提供。システム開発実績は20年以上である。「医療安全」「仕事効率の向上」「経営支援」と三つのコンセプトを掲げ、一般的な電子カルテとして標準機能は使いやすく、最新の機能を搭載する安心・安全な電子カルテ「MI・RA・Is V(ファイブ)」のクラウド型サービス「MI・RA・Is V for Cloud」のほか、小規模医療機関向けのクラウド型電子カルテサービスである「MI・RA・Is/QS」などを提供する。
◆キーウェアソリューションズ <3799> [東証S]~官公庁向けシステムや社会インフラ、そして医療ITの分野において、NEC <6701> [東証P]などが受託した大型プロジェクトを同社が開発チームとして支える。電子カルテシステム・オーダリングシステムの構築を顧客の要望に合わせたソリューションとして提供。また、オーダリング機能を内包したカルテシステム構築へのステップアップなど、各病院仕様に沿ったシステムを実現する。今年1月付で100%子会社となるキーウェアメディカルを設立し、4月に医療ソリューション事業を吸収分割によってキーウェアメディカルに承継させており、サービス提供体制を強化している。
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