金は安値もみ合い、米軍の原発周辺攻撃でイランは紅海封鎖を画策 <コモディティ特集>
金の現物相場は7月、予想以下の米雇用統計が支援要因になったが、イランがホルムズ海峡で航路の外れた商船を攻撃したことをきっかけに米国と武力衝突すると、戻りを売られた。トランプ米大統領は戦闘終結に向けた覚書は「終わった」と述べた。米国とイランの攻撃の応酬が続くなかイランはホルムズ海峡を再封鎖し、米大統領もイランに対する海上封鎖を再開することを発表した。今回の米軍の攻撃では橋や原子力発電所周辺も目標となり、イランはイエメンの親イラン武装組織フーシ派に紅海を封鎖する準備を指示した。イランの攻撃で米兵が死亡し、米軍は報復攻撃を続行。フーシ派はサウジアラビアへの攻撃を開始した。
中東の再緊迫化で原油高に振れたことで金はインフレヘッジとして買われ、地合いを引き締めた。米大統領はイランやフーシ派への大規模攻撃を警告した一方、13日連続で行っていた米軍のイラン空爆を停止。米国の迎撃ミサイルの在庫枯渇も指摘されるなか、パキスタンは協議再開を模索している。ただ、フーシ派のサウジアラビア攻撃が続き、紅海封鎖も懸念されている。ホルムズ海峡の南側の通航を試みた石油タンターが機雷に触れ、爆発炎上したことも伝えられている。欧米はホルムズ海峡の自由航行を主張しているが、イランはオマーンとホルムズ海峡の管理について協議している。
一方、米下院で23日、戦争の停止を指示する戦争権限決議案を可決したが、米上院では別の決議案の審議入りを阻止した。ただ、イラン戦争が続けば米議会で戦争権限決議案が可決され、米大統領に戦争停止が指示される可能性もある。中東情勢の先行き不安が残るなか、金は3961~4200ドルの安値圏で方向性を模索している。
●今夜の米FOMCで金利据え置きも9月利上げの可能性
6月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は5万7000人増加と事前予想の11万人増を大幅に下回った。過去2ヵ月分もそれぞれ下方修正された。失業率は4.2%と前月の4.3%から低下した。ウォーシュ米連邦準備理事会(FRB)議長は、インフレ期待とインフレリスクが数週間で低下しているとの見方を示し、CMEのフェドウォッチでは年内3回利上げの見方は2回利上げに後退した。また、6月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.5%上昇と前月の4.2%上昇から伸びが鈍化した。エネルギー価格の下落を反映し、事前予想の3.8%上昇も下回り、今夜の米連邦公開市場委員会(FOMC)では金利据え置きが見込まれた。
ただ、米国とイランの軍事衝突による原油高でインフレ懸念が高まり、米国債の利回りが上昇。10年債利回りは一時4.72%と18ヵ月ぶりの高水準となった。その後は米国とイランの攻撃停止を受けて4.64%に低下したが、フーシ派の攻撃も懸念されており、今後の動向を確認したい。
●米イランの軍事衝突で金ETFから投資資金が流出も安値拾いの買い
世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、7月27日に1009.30トン(6月末1005.08トン)となった。米国とイランの軍事衝突を受けて投資資金が流出し、17日に999.02トンまで減少したが、4000ドル前後で下げ止まり、安値拾いの買いが入った。原油高でインフレヘッジとして意識されたことも買われた要因になるとみられる。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは7月21日時点で18万3910枚(前週18万6682枚)となった。安値拾いの買いが入るなか、7月7日の買い越しは19万4246枚と1月27日以来の高水準となった。ただレンジ相場が続いたことを受け、戻り場面で手じまい売り、新規売りが出た。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース