明日の株式相場に向けて=「キオクシア決算」後に待つのは天国か地獄か
30日の東京株式市場で日経平均株価は433円高と反発。上げ幅は一時1500円近くに迫ったものの、5日移動平均線に押し戻される格好となった。TOPIXは反落。ほぼ十字足で75日移動平均線が下値を支持している。
29日まで開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)は、一部でサプライズ利上げ予想があったものの、フタを開ければ政策金利は据え置きとなった。サプライズをもたらしたのはウォーシュ議長の記者会見を受けた米金利の反応だ。短期・中期の債券利回りは低下(価格は上昇)したのに対し、長期・超長期の利回りは上昇(価格は下落)し、利回り曲線(イールドカーブ)はツイスト・スティープ化した。大量のオプション取引が会見中に入ったことが長期金利を押し上げたとされる。米債市場にはやや不穏な空気が漂い始めている。
前日の東京市場はSKハイニックス<SKHY>決算と同社株の急落に日経平均は動揺したものの、30日に決算発表を行ったサムスン電子の株価は比較的マイルドな反応となり、市場参加者にある種の安心感をもたらす結果となった。改めて2社の26年4~6月期の純利益をみると、SKハイニックスは日本円で約10兆6000億円。サムスン電子はスマートフォン事業で営業赤字を計上しながらも、約8兆1000億円となった。四半期ベースでみると国内ではトヨタ自動車<7203>が24年10~12月期に純利益2兆1932億円を記録したが、今回の韓国2社の純利益はこれとは比較にならない規模である。「3カ月間でこれ以上稼げるのかというレベルの数字。こんな状態が持続するとは考えにくい」(国内証券)との見方がある。31日引け後にはキオクシアホールディングス<285A>が4~6月期の決算を発表する。市場参加者の多くは身構えを余儀なくされることになるだろう。市場側の高い期待を上回る業績予想を示すことができるかが注目点となるものの、それがシンプルに全体相場の押し上げにつながるかどうかは不透明感が強い。
ロング・ショート戦略をとるヘッジファンドのうち、「半導体ロング・非半導体ショート」のポジションを構築した筋は上半期にかなりの収益を確保したとされる。そのアンワインド後、再び下半期に同じような形で、半導体株ロングをとるためのモチベーションが彼らにあるかというと、微妙なところだ。キオクシアが再びエベレストのような山をチャートに描く蓋然性があれば旨味はある。しかし、中国のメモリー大手CXMTが鮮烈な市場デビューを果たした後である。中国勢による過剰供給が鉄鋼市況を荒らしたのと同様のことが、将来のメモリー市場に起きるとの懸念が広がりつつある。ヘッジファンドの一角が半導体株に戻らないならば、反騰のための十分なエネルギーが得られず、大相場の終焉が現実味を増すことになる。投資家にとっては視座を移す柔軟性が求められるところだ。キオクシアの決算発表後の東京市場に待ち構えるのは天国でも地獄でもない。投資家にとっての「日常」であり、おそらくはこれまでのセクターローテーションの延長になるに違いない。円安起点の物価高が内需拡大の足かせとなるなら、製造業系のバリュー株がおのずと候補に挙がってくる。
CXMTに関して言えば上場で調達した資金を生産体制の強化に振り向けるとみられている。そもそも中国経済は停滞感が強まっており、景気対策が打ち出される公算が大きい。その裏で6月の日本の工作機械受注額は単月として過去最高となり、中国向け受注も歴代最高額となったという。政治面で日中関係が冷え込んでいるとはいえ、中国でのモノの動きが活発化した際には、間接的に日本経済にもプラス効果をもたらすことになる。特にその恩恵を強く享受すると期待されるのが、グローバルニッチトップ企業の製品・技術だ。プリント配線板用ドリル世界最大手のユニオンツール<6278>をはじめ、ダップ樹脂や医薬品精製用シリカゲルなどニッチトップ商品を多数持つ大阪ソーダ<4046>、ハイエンド放電加工機で世界トップ級のソディック<6143>などの株価の出直りを期待したい。
日程面では、国内では寄り前に7月東京都区部消費者物価指数と6月の完全失業率と有効求人倍率、鉱工業生産、商業動態統計が公表される。取引時間中には中国の7月製造業・非製造業PMIや、日本の6月住宅着工件数の発表も控えている。日銀の金融政策決定会合終了後に政策金利と経済・物価情勢の展望(展望レポート)が公表され、引け後に植田和男総裁による記者会見が行われる。
主要企業の決算発表も相次ぎ、キオクシアのほかルネサスエレクトロニクス<6723>、三菱電機<6503>、住友電気工業<5802>、ソニーグループ<6758>、ファナック<6954>、村田製作所<6981>、三井住友フィナンシャルグループ<8316>などが予定する。このほか欧米ではドイツの7月失業率とユーロ圏の7月消費者物価指数、米国の7月シカゴ購買部協会景気指数などが発表される。(長田善行)