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膨張する防衛費、「三羽烏」から「AI・ドローン」に広がる関連株 <株探トップ特集>

特集
2026年8月31日 19時30分

―概算要求で過去最大の8兆9000億円、急拡大するデュアルユース分野―

8月31日、2027年度予算の概算要求が締め切られた。防衛省は、過去最大規模の約8兆9000億円を求めるが、今後更に膨らむとの見方が大きい。防衛費拡大の是非はともかく、日本を巡る地政学リスクの高まりや、安全保障関連3文書の改定を控えるなか、株式市場では「防衛」に絡む銘柄へ熱い視線が向けられている。投資家の視線は主力の“防衛三羽烏(からす)”に集中しやすいが、人工知能(AI) ドローンなどを使用した新しい戦術の登場も関連株のすそ野を大きく広げているだけに、幅広い視点での銘柄選別が重要になっている。過去最大規模となる予算を後ろ盾に、注目度が高まる 防衛関連株を追った。

●巨大企業中心に業績寄与の可能性

防衛三羽烏とは、防衛省との取引実績で群を抜く三菱重工業 <7011> [東証P]を筆頭に、川崎重工業 <7012> [東証P]、IHI <7013> [東証P]の総合重機大手3社を指す。日本政府は4月に「防衛装備移転三原則」を改定。殺傷能力を備える防衛装備品の海外移転が可能になったが、これを思惑材料に年初には物色人気化した経緯がある。現在のところ、いずれも株価は冴えない展開を強いられているが、業績は好調で申し分ない。ただ、ここ最近はAI・半導体関連株に対する一極集中人気を背景に、ファンド筋などの一部機関投資家やモメンタム重視の個人投資家に防衛関連株から資金シフトする動きが観測され、上値を重くしていた面は否めない。

防衛装備庁の「令和7年度中央調達」における上位20社の契約実績をみると、上場会社に限っても断トツの三菱重を筆頭に三菱電機 <6503> [東証P]、川重、NEC <6701> [東証P]、富士通 <6702> [東証P]、日本製鋼所 <5631> [東証P]、日立製作所 <6501> [東証P]、SUBARU <7270> [東証P]、双日 <2768> [東証P]、IHI、日鉄ソリューションズ <2327> [東証P]、沖電気工業 <6703> [東証P]、ENEOSホールディングス <5020> [東証P]傘下のENEOS(契約金額順)といった日本を代表する企業が名を連ねている。調達する防衛装備の品目にもよるが、防衛費の増加基調が継続する可能性が高まっているだけに、業績への寄与も大きくなることが予想される。

もちろん従来から防衛関連の一角として注目されてきた、防衛用システム製品が好調な日本アビオニクス <6946> [東証S]や防衛装備品分野でも受注残が高水準に積み上がった古野電気 <6814> [東証P]などの動向にも関心が向かう。また、株式市場で思惑買いを誘ってきた豊和工業 <6203> [東証S]、石川製作所 <6208> [東証S]、重松製作所 <7980> [東証S]といった時価総額の比較的小さい銘柄に関しても目が離せない。

●「新しい戦い方」で頭角現す銘柄群

こうした防衛関連として位置付けられる銘柄に投資家の視線は熱いが、防衛省では「先進的な技術に裏付けられた新しい戦い方が勝敗を決する時代に入った」としており、民生先端技術を用いたドローンやAIをはじめデュアルユース(軍民両用)分野が拡大することは必至だ。従来の考えに捉われない自由な発想と開発力で、防衛分野において存在感を示す中小型株にもスポットライトが当たり始めている。

防衛白書でも、「新しい戦い方」について大きく取り上げており、ミサイルとあわせて、陸・海・空の各分野において多くのドローンを重ねて活用する防衛体制の構築に取り組んでいるとしている。デュアルユース技術の取り込みも欠かせないとし、小規模で発足間もないものの高い技術力を持つ企業(スタートアップ)などとも連携を強めていくとしていることもドローン関連株などへの思惑を募らせる。

●ドローンでテラドローン、ACSL、チェンジHD

Terra Drone <278A> [東証G]はデュアルユース分野で頭角を現しており、株式市場でも極めて注目度が高い。6月にウクライナの迎撃ドローン企業2社の買収に加え、欧州防衛事業の拠点として、エストニアでの新会社設立を発表している。8月25日には、防衛装備庁が実施する「迎撃ドローン早期取得プログラム」において、同社の国産迎撃ドローン「Terra B1」が、多くの提案企業のなかから実証試験を単独で通過し、次の段階である量産段階へ進んだことを公表。より低コストで運営できる防衛が求められるなか、短期量産・納入フェーズへ前進したことを受けて投資家の評価を押し上げている。業績面からみると苦戦が続き、第1四半期(2~4月)連結決算は、営業損益が4億3400万円の赤字(前年同期2億8300万円の赤字)で着地。きょうは、前週の急伸の反動もあって大きく売られているが、防衛関連株に活躍期待が高まるなか、目が離せない展開はまだまだ続きそうだ。

ACSL <6232> [東証G]も防衛・安全保障分野に注力している。防衛省を含めた政府調達への取り組みを進めており、24年度から継続して防衛省向け案件を受注。3年連続で大型案件の受注実績を着実に積み重ねている。防衛事業については、機体販売に加え運用支援・保守、システム連接・SW連携などへ提供領域を拡大し、中長期的な事業成長を目指す方針だ。6月には、「Japan Drone 2026」会期中、政府・防衛関係者がACSL展示を視察し、同社の国産小型空撮機体「SOTEN(蒼天)」及び次世代小型空撮機体について説明を受けている。業績は厳しい状況が続くが、今期最終利益は赤字縮小に上方修正している。8月24日取引終了後に、海外募集による新株式発行を実施すると発表したことで、翌日には株式価値の希薄化が懸念され大きく売られたが、押し目買い意欲も観測される。株価は下値模索の状況が続くが、防衛分野での展開を強めるだけに、注目は怠れない。

また、企業や自治体のIT構築支援を手掛けるチェンジホールディングス <3962> [東証P]にも目を配っておきたい。同社は、防衛省向けデジタルトランスフォーメーション(DX)案件を中心に公共DXが大きく伸長している。8月3日には、物流分野を起点としてドローンの実運用を積み重ねてきたエアロネクスト(東京都渋谷区)とAIドローンを活用した「危機管理AX(AIトランスフォーメーション)」の実現に向け業務提携契約を締結したと発表。業務提携の目的の一つに、防災・防衛・地域レジリエンス分野におけるAIドローンの社会実装を掲げている点も見逃せない。8月13日に発表した27年3月期第1四半期(4~6月)の連結営業利益は、前年同期比19.0%減で着地。一方、株価はじわり浮上。7月1日に、直近安値893円をつけた後は切り返しに転じている。

●SHIFTは1000円大台復帰へ

新しい戦い方が前面に打ち出されるなか、防衛分野に活躍領域を広げるさまざまな銘柄にも視線が向かう。ソフトウェアのテスト受託事業を主力とするSHIFT <3697> [東証P] は、8月7日に「防衛装備庁のAI装備品などの技術的審査に係る支援役務を受託」したことを公表。同社は25年に、防衛領域に特化したコンサルティング企業を設立し、「防衛産業サイバーセキュリティ基準対応支援サービス」、「防衛事業適合事業者制度 契約・認証支援サービス」など多様なサービスを展開している。7月15日に発表した第3四半期累計決算(25年9月~26年5月)は、連結営業利益段階で113億8300万円(前年同期比4.3%減)で着地したが、3~5月期では同16.5%増の営業利益44億7600万円となっている。株価は、6月25日につけた直近安値601円を底に反転攻勢を強め、現在は1000円大台手前で推移している。

●ベイカレント、防衛など新たな需要が顕在化

ベイカレント <6532> [東証P]は総合コンサル大手だが、 サイバーセキュリティーや防衛など新たな需要を取り込み、成長ロードを快走している。4月には、産業用AIソフトウェアのプロバイダーであるIFSジャパン(東京都千代田区)と製造業及び航空宇宙・防衛分野を中心に戦略的協業を開始したと発表。システム導入にとどまらない実効性の高いDXを推進する方針だ。7月15日に27年2月期第1四半期(3~5月)の連結決算を発表。営業利益が144億8100万円(前年同期比18.6%増)となり、サイバーセキュリティーや防衛といった新たな需要が顕在化した格好となった。同社では28年2月期にかけサイバーセキュリティー・防衛領域の売上高構成比が10~20%程度に拡大すると見込んでいる。株価は新値街道をまい進しており、昨年10月につけた上場来高値9075円奪回を目指す展開。

●戦略分野として強化するソルクシーズ

金融向けシステム開発に強みを持つソルクシーズ <4284> [東証S]も「航空宇宙・防衛」領域への取り組みを戦略分野として強化している。エッジコンピューティング開発は、同領域向けを中心にして足もと好調に推移。3月には、グループ企業が航空宇宙・防衛に特化した品質マネジメントシステムの国際規格 「JISQ 9100」の認証を取得したと発表。同規格はグローバルな部品調達基準として採用されており、取引機会の拡大につなげる構えだ。生成AIやDX開発関連のニーズを捉え業績も好調に推移している。26年12月期の連結営業利益は、前期比14.5%増の16億円を予想し最高益更新の見通しだ。株価は、年初に554円まで買われた後は調整局面入り。上値の重い展開が続くが、ここにきては、じわり底値離脱の動きをみせている。

●日電波、「特機」向けで存在感

水晶振動子や水晶機器専業大手の日本電波工業 <6779> [東証P]は、防衛向けを中心とする「特機」向けでも存在感が大きい。防衛システムでは、妨害耐性や秘匿通信など高い性能が求められているが、こうした要求に応える特殊水晶発振器と周波数シンセサイザを国内で唯一手がけており、日本の防衛向けデバイスをほぼ100%供給しているという。8月7日に発表した27年3月期第1四半期(4~6月)の連結決算は、営業利益が前年同期比58.8%増の12億3900万円と好調発進。通期業績予想も上方修正し、同利益は従来予想の40億円から52億円(前期比55.0%増)に大幅増額している。特機は前第4四半期に売上計上が集中したことで反動減はあったものの、旺盛な需要に変わりはない。AIデータセンター向け光トランシーバ及び車載向け製品の需要が当初想定を上回る見通しだ。

●放電精密、エコモットにも注目

金属放電加工、アルミ押出用金型大手の放電精密加工研究所 <6469> [東証S]も、航空・宇宙分野が堅調に推移。防衛力整備計画の大幅な拡充により、防衛装備品の需要が増加している。27年2月期の連結営業利益は、前期比28.0%増の14億3600万円を予想しており、連続で過去最高益を更新する計画だ。また、エコモット <3987> [東証G]はIoTインテグレーション事業を展開するが、防衛分野でも活躍領域を広げている。4月には、防衛装備庁防衛イノベーション科学技術研究所が実施する「実証型ブレークスルー研究」の「海洋監視制御システムの研究」にコンソーシアムの実施協力機関として参画していることを公表。参画企業・機関と連携し海洋監視制御システムの確立を目指す。8月27日の取引終了後には、経済産業省の26年度「成長型中小企業等研究開発支援事業」に採択され、ヒグマの早期発見や侵入経路の把握、電気柵の状態監視などを行う自律巡回ロボットシステムを開発すると発表し、前週末には急速人気化していた。

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