金は米財政危機などで堅調、FRB議長の利上げ示唆でFOMCも焦点 <コモディティ特集>
金の現物相場は8月、予想以下の米雇用統計や米財務省が長期国債の買い戻し倍増を発表したこと、米国の財政危機に対する懸念が支援要因になり、5月14日以来の高値4694ドル台を付けた。しかし、ウォーシュ米連邦準備理事会(FRB)議長が利上げを示唆したことをきっかけに調整局面を迎えた。
7月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月比2万3000人減と事前予想の8万人増から予想外に減少した。過去2ヵ月分の雇用者数も大幅に下方改定された。失業率は4.1%と前月の4.2%から低下した。また、米消費者物価指数(CPI)は前年比3.4%上昇と前月の3.5%上昇から小幅鈍化し、事前予想と一致した。ガソリン価格が2ヵ月連続で下落し、インフレの落ち着きを示した。これを受けて米FRBの利上げ観測が後退し、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利据え置きの見方が強まった。
ただ、米30年債利回りは18日、インフレ高止まりや財政危機に対する懸念から19年ぶりの高水準となる5.34%をつけた。米財務省が長期国債の買い戻し倍増を発表したことを受けて米国債の利回りは低下したが、米政府債務が40兆ドルを突破したことから低下は限定的となった。ベッセント米財務長官は財政健全化を発表する見通しを示し、20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で債務から脱却する唯一の道は成長との見方を示した。
一方、米FRB議長はジャクソンホール会議の講演で、インフレ率が目標の2%に向かって鈍化しているとの確信が得られなければ、米FRBには「やるべき仕事がある」と述べ、利上げを示唆した。15~16日の米FOMCの利上げ観測が戻っており、米雇用統計やインフレ指標を確認したい。
●米政権のイラン追加制裁発表で米中首脳会談への影響などを確認
米国やイランのホルムズ海峡封鎖の動きが続くなか、米政権は新たな対イラン制裁を発表した。イランと取引する国や団体に対する二次制裁の対象を拡大した。米政権は28日、エジプトの大手銀行バンク・ミスルを制裁対象に加えると発表し、米金融機関へのアクセスを遮断した。米財務長官は「イラン政権を支えるあらゆる経済的生命線を断ち切ることが目的」と述べており、今後の発表やイラン経済への影響を確認したい。
また、米政権は米中首脳会談を控え中国の過剰生産能力問題に絡み、中国製品に対して7.5%の関税を課す方針とした。
一方、イラン革命防衛隊はイスラマバード覚書に基づき、米国がイランの条件を受け入れない限り、ホルムズ海峡は開放されないとの姿勢を示した。トランプ米大統領はイランに降伏を要求しており、今回の制裁措置が新たな停戦協定につながるかどうかが当面の焦点である。9月1日、米軍のイラン攻撃が再開したが米大統領は全面戦争を否定しており、一時的なものになるかどうかを確認したい。
●予想以下の米雇用統計などで金ETFに投資資金が戻る
世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、8月31日に1042.36トン(7月末1007.02トン)となった。予想以下の米雇用統計や米FRBの利上げ観測後退、米財政危機に対する懸念などを受けて投資資金が流入した。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは8月25日時点で24万3334枚(前週22万2189枚)となり、1月20日以来の高水準となった。ニューヨーク金は今回の上昇で中長期の節目となる200日移動平均線(31日4540ドル)を試しており、ここを突破できるかどうかがテクニカル面の焦点である。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース