有沢正一(岩井コスモ証券)が斬る ―どうなる?半年後の株価と為替―
日米の株式相場は高水準を維持しながらも伸び悩んでいる。米国・イスラエルとイランの戦争は終結のメドがつかず、株式や商品のマーケットを揺さぶっている。原油高や財政の先行き懸念などを背景に日米の長期金利は大幅に上昇し、株価の押し下げ要因となっている。トランプ米大統領が「就任から24時間以内に終わらせる」としていたロシアによるウクライナ侵攻も収束のメドはつかない。米国のインフレ懸念も根強く、金利上昇を受けてハイテク株が大幅に下落する場面もあった。世界の政治経済が混迷を深める中、アナリストやエコノミストなどの専門家は、「半年後の株価」や「半年後の為替」をどう見ているのか。インタビューを通じて、著名アナリストに予測してもらい、その背景を詳報する。第54回は、岩井コスモ証券の有沢正一・投資調査部長に話を聞いた。

1989年岩井証券入社、2003年よりイワイ・リサーチセンター長、2012年5月より岩井コスモ証券、2017年1月より投資調査部長、2025年7月より現職。日本証券アナリスト検定会員。株式投資の対象となる企業調査の傍ら、マーケット視線で経済や社会の動きを分析、解説。YouTubeやウェビナーなどでも個人投資家向けの市場解説を行う。ストックボイスTV「北浜のいぶし銀」、サンテレビ「キャッチ+」出演。
| 有沢正一氏の予測 4つのポイント |
| (1)半年後の日経平均株価は7万5000~8万円程度 |
| (2)半年後のS&P500株価指数は8000~8500ポイント程度 |
| (3)秋以降は半導体だけでなくバリュー株にも資金が入り、NT倍率の急上昇は抑制 |
| (4)注目するセクターは半導体、電機、銀行、保険など |
―― 株式相場は高水準で推移しつつも、足元でやや伸び悩んでいます。半年後(2027年3月末)の日米の株価水準をどう予測しますか。
有沢:私は半年後の日経平均株価を7万5000~8万円程度、S&P500種株価指数は8000~8500ポイント程度だと予測しています。
図1 S&P500(週足)

―― 日米株価は上下動しながらも来年3月末に向けて回復していく、というシナリオかと思います。予測の背景を教えて下さい。
有沢:最も大きな要因は、日米ともに企業業績が好調だということです。日本の上場企業は27年3月末に2割増益(最終損益ベース)の見通しで、米国もそれ以上の業績をあげるとみられています。このため、株価が上昇しても予想株価収益率(PER)はそれほど上昇しません。現在もTOPIX(東証株価指数)のPERは16倍程度、S&P500のPERは20倍程度で、必ずしも割高とはいえません。
半導体やAI(人工知能)関連銘柄への買いの背景が、マーケットの期待先行から実際の業績に基づいた強固なものに変化しつつあることも要因の1つです。今年6月まで半導体関連の株価は急ピッチで上昇してきました。この反動で今年7~9月は調整に入りましたが、AI関連のインフラ投資は期待と同等かそれ以上でした。半導体関連は今秋にスピード調整を終え、年末にかけて好調な業績に基づいた安定的な株価上昇が期待できるでしょう。
図2 日経平均の予想PERと予想EPS

―― 実際、半導体関連企業の好決算は続いています。9月30日には、米半導体メモリー大手のマイクロン・テクノロジー<MU>が26年9~11月期の売上高が前年同期比4.5倍前後になりそうだと発表しました。
有沢:投資家の間では、マイクロンをはじめとした半導体、AI関連企業の業績が大幅に拡大していることについて安心感が広がっています。10月以降は半導体関連を中心に日米の株式相場は堅調に推移していくと考えています。
―― 株式市場関係者の間では、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)などによるAI関連投資は過剰ではないかとの懸念がくすぶっています。
有沢:過剰投資への懸念は否定しません。無駄になる投資が一部出てくる可能性はあるでしょう。しかし、巨大な投資を受けて、電線やメモリーなど関連企業の業績が今後3~4年にわたって拡大することも事実です。メモリー供給は長期契約になっており、かつてのような最高益の翌年が赤字といった極端な状況にはならないでしょう。急上昇したキオクシアホールディングス <285A> [東証P]も足元で反動で売りが出ていますが、PER(推計)はいまだに割安で、株価は今後、回復していくでしょう。
―― 日経平均株価を東証株価指数(TOPIX)で割った「NT倍率」は足元で上昇傾向にあります。半導体関連株に資金が集まり、バリュー(割安)株が下落する可能性を懸念する声もあります。
有沢:確かに今年の春先や夏にはNT倍率が急上昇しましたが、10月以降は半導体以外も堅調に推移すると考えています。AI関連株の調整中、第1四半期の決算発表もあってソフトウェア、ゲームなどバリュー株に見直し買いが入りました。半導体関連は株価の動きが激しく、個人投資家は手を出しづらい面もあります。投資家は半導体一辺倒ではなく、バランスの取れたポートフォリオを取るようになると思います。
―― 日米ともに物価高や長期金利の上昇が、家計はもちろんマクロ経済やマーケットの懸念材料ともなっています。日銀やFRB(米連邦準備理事会)は利上げに動いていますが、株式相場への影響は。
有沢:金利が上昇しても、企業がそれを上回るような業績をあげられれば問題ありません。日本企業の経営基盤は強固で、多少利上げをしても景気は悪化しないと考えています。市場関係者が恐れているのは、利上げが遅れてしまい、将来的に急激な利上げを繰り返すことです。日銀が適切なペースで利上げをするのであれば、市場からは「長期金利を抑える意思表示だ」と受け止められ、かえって安心感が出てくると思います。
―― 11月には米国で中間選挙が実施されます。
有沢:当初は米中間選挙で共和党が敗北すれば、株式相場の重荷になるとの見方もありました。しかし、仮に共和党が勝利して予算の権限を握れば、イラン戦争や関税に加えて、財政を無視した減税が実施される可能性が高まります。このため、足元では「共和党が負けた方がトランプ政権の暴走を止められる」との見方も浮上しています。
―― 注目しているセクターや銘柄を教えて下さい。
有沢:日本では東京エレクトロン <8035> [東証P]やアドバンテスト <6857> [東証P]など半導体製造装置のほか、AI、データセンター関連の銘柄です。パナソニック ホールディングス <6752> [東証P]などの電子関連も、今後の決算を受けて見直し買いが入ると見ています。このほか、日立製作所 <6501> [東証P]や三菱重工業 <7011> [東証P]など重電セクターも注目です。金利上昇や政策保有株の売却が追い風になる三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]や東京海上ホールディングス <8766> [東証P]など金融株も期待が持てます。
このほか、注目したいのはNTT <9432> [東証P]の動きです。2年ほど前から株価は低迷してきましたが、ここへきて株式分割(2023年6月末を基準日に25分割)した時の株価を超えてきました。同グループが進める次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」などが評価されてきた可能性があり、個人投資家にも「経営基盤のしっかりした銘柄を長期保有すれば将来的に報われる」と自信を持たせた可能性があります。
(※聞き手は日高広太郎)

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